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【実話】ケニアで隣人にお金を貸した男の話

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一年前のある日の夜こと。

ケニアの田舎の町でアパート住まいをしている日本人Sがパソコンをしながらくつろいでいると、ドアがノックされた。

開けてみると、そこには見ず知らずのケニア人女性Jが立っていた。

J「最近隣の部屋に引っ越してきたJよ。ちょっと相談があって…。」

S「どうしたの?」

Jお金を貸して欲しいの。」

あまりにも突然すぎる依頼だったが、ケニア人にものやお金をせがまれることに慣れていたSは微塵も動揺しなかった。

S「いくら?」

J「3,000シリング(約3,000円)。」

S「なんで?」

J「二人子供がいるんだけど、夫と別れてお金がないの。でも子どものミルクは買わなきゃいけなくて…。」

“子どものミルク”という言葉の前には拒絶する術を持たなかったSは、渋々ながらもお金を渡した。

この時Sは強く同情して、お金は返ってこなくてもいいくらいの気持ちだった。

しかし、このSの行為が如何に軽率で、後に自身をどれほど苦しめることになるかを知る由もなかった。

 

それから1週間ほどして、またしてもJはSの前に姿を現した。

J「話があるの。」

S「なんだい?」

何となく察しはついていた。

J「この前のお金が尽きて、もう少し必要だから貸してほしいの」

S「いくら?」

J「1万シリング(約1万円)。」

これには流石にSも動揺した。

S「何でそんなに必要なんだ?」

J「引っ越してきたばかりで、電気も水もガスもないし、寝るためのマットもない。子どものミルクとご飯も買えないし…。

まだ同情の念はあった。それでもSは心を鬼にした。

S「申し訳ないけど、その前にこの前のお金を返してくれ。」

すると、Jは鞄からこれ見よがしに数枚の紙と身分証を取り出した。

J「今日銀行でローンの申請をしてきたの。10万シリング。2週間もすればこれが通るはずよ。それに私は大学の事務で働いてて月収は3万あるの。必ず返せるわ。」

3万シリングはケニアでは平均以上の月収。

それだけあれば見ず知らずの人にお金を借りるほど困ることもないだろうと、普通に考えればこの発言はいかにも嘘っぽかった。

ただ、家賃8,500シリングという比較的高額なアパートに入居している時点で、ある程度の収入があることは確からしいと推察することはできた。

S「わかった。ただし、誓約書を書いてくれ。」

当然、1万円はSにとっても大金。

今回は、同情しながらも、何をしてでも必ず返してもらうという覚悟を持って貸すことを決意した。

J「わかったわ。」

貸した金額が合計13,000シリング、返済日はローンが下りる2週間後の◯日、という内容を紙に書いてサインさせた。

Jは上機嫌で自分の部屋に帰っていった。

 

そして運命の2週間後。

SはJの元へお金を取り立てに行った。

S「今日が返済日だよね?お金、返して。」

J「それが、まだローンが下りないの。」

S「え?」

J「申請書は通ってるから必ず下りるわ。もう少し待って。」

S「給料日はいつ?そこから返してよ。」

J「月末よ。だけどローンですぐに返すから大丈夫。」

そんなやりとりでその日は終わった。

Sは肩を落として部屋に帰った。

こうなることはなんとなく想像していた。

それでも、Sはまだお金を取り返してやるという熱意を失っていなかった。

その日から数週間に渡って何度も取り立ての電話をかけた。

いくらか心苦しかったけど、Jへの嫌悪感がSを動かしていた。

しかしJは「ローンはまだ下りないけど必ず返す」の一点張り。

頼みの給料も「支払いが遅れてる」などとかわされ続けた。

やはりローンを申請したというのは嘘で、申請書もダミーだったに違いない。

疑念が確信に変わっていた。

 

しかしそんなある日、Sが出勤するためにJの部屋の前を通ると、部屋がもぬけの殻となっていた

夜逃げ…?

完全にやられたと半ば諦めながらJに電話をかけると、なんと電話に出た。

S「どこ行ったんだ?」

J「大家に家を追い出されたの。」

S「そうなんだ。何があったの?」

J「大家は私のことが嫌いなの。お金は必ず返すから安心して。」

どうやら返す気はあるらしかった。

それから、大家のところに話を聞きに行った。

そこでSは衝撃の事実を知ることになった。

なんと、Jはアパートの家賃を滞納していたのだという。

そしてそれだけではなく、盗電盗水を頻繁に行っていたことも明らかになった。
※電気の配線や水道のパイプやメーターを勝手にいじって料金を支払わずに利用するという犯罪が横行している。

たしかに、その数週間前にSの部屋も他の住人も断水だ停電だと軽い騒ぎになり困っていたのだった。

大家は言った。

「彼女はただの悪人だよ。災難だったね。」

Jに対する同情の念はついに0になった。

1万シリングは恐らく家賃の支払いに充てられたのだろう。

他の住人からもいくらかお金を借りていたらしい。

怒りを通り越して悲しい気持ち。

Sはそんな感情が分かった気がした。

 

それから1年が経った。

SはJに何度か連絡しているが、お金のことなど忘れたかのように必ず電話に出る。

むしろJからかかってくることもある。

いったいどんな神経してるんだろうか…。

しかし、Sはもう諦めている。

もちろん最終手段を取れば、13,000シリングというお金を取り返すことは可能だろう。

だが、SはもうJの顔をもう見たくない。

トラウマになったあの声すら聞きたくない。

 

13,000円。

勉強代にしては高すぎた。

悲しい気持ちも味わった。

でも後悔はしていない。

ある日、JはSの目の前で涙を流したことがあった。

夫との別れや、子どもを養う辛さを打ち明けた。

「Life is too hard…」

この言葉は今でも鮮明に頭に残って離れない。

確かにJは嘘をついた。

しかし、夫と別れ生活が苦しいのも、子どもにミルクが必要なのも紛れもない事実に違いない。

そんな中、ふと現れたお金を持っていそうな日本人に助けを求めたというだけのことなんだろう。

困っている人を助けるという判断は間違っていなかった。

と、Sは思いたい…。

 

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